貿易戦争と日本

「我々は中国にカモられている。日本からカモられている。メキシコからカモられている。カナダからカモられている。全世界からカモられている。アメリカをカモにしていない国はない。」トランプ米大統領、2018年選挙資金調達にて

 

トランプ大統領が中国に仕掛けた貿易戦争が悪化する中、日本は自国の経済への悪影響を懸念して、世界各国と経済関係を強める政策を実行している。中国、ヨーロッパ連合、そしてアメリカ:2018年9月27日、安倍総理は何年もためらっていたアメリカと二カ国間貿易協定を結ぶ同意をした。

 

野村研究所エグゼクティブ・エコノミスト木内登英は2018年9月20日のレポートで、「米中貿易戦争が日本の産業に与える影響に注目すると、最も大きな打撃を受けると予想されるのは自動車産業である 」と言う。アメリカ経済が貿易戦争により停滞するにあたって、「日本の自動車産業は対米輸出依存度が他の産業に比べて大きいため...日本経済の将来にとっても損失は極めて大きなものとなろう」と主張する。この日本産業の輸出の金目となる自動車に関税の脅威を前にして、安部総理は考えを変えたようだ。

 

日本の大手企業経営者も米中貿易戦争の進展具合を懸念している。2018年9月28日の日刊工業新聞は、日本大手企業経営者の76%が「貿易戦争が鉄鋼や素材、自動車関連、電機など製造業を中心に、事業への悪影響を懸念する」とアンケートで答えた、と伝えている。

 

2018年9月22日の日本経済新聞の記事によると、日本の製造業者は「長期的視点」を念頭に生産拠点と輸入地域をシフトしている。ホンダ、三井、住友、丸紅、そしてユニクロ社など、多くの企業が中国とアメリカからタイ、ベトナム、ブラジルなどに事業を移している。

 

日本は他国との協調性も高めている。世界経済の3割を占めるEUとの自由貿易協定を2018年7月17日に締結したあと、安倍総理は選挙戦の勝利に励まされ、中国や他の国との関係を強めたいようだ。

 

安部総理は 2018年9月2日の産経新聞とのインタビューで、「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と語った。 貿易戦争が悪化する中、日本は中国が後押ししている16カ国間、10か国のアセアンメンバー、中国、オーストラリア、インド、ニュージーランド、韓国も含めた、世界人口の約半分、GDPの3割をカバーする自由経済協定に加わることを検討している。日本はこの提案に「前向き」であると報告されている。9月22日、日中韓の間で自由貿易協定を結ぶべき、との声も上がった。

 

上の例を見ればわかるように、米中貿易戦争が悪化する中、日本は十分に対策を練っている。安部総理の行動は活発だ。世界各国のプレイヤーと自由貿易協定を結ぶ、もしくは交渉を始める。また、企業も長期的な取り組みとして活動地域を他国へ移す。アメリカとの二国間貿易協定を結ぶ決定をする。これに加え、TPPプラス11、インドと関係を深めるなど、日本の外交政策も堅調に推移している。

 

国連事務総長アントニオ・グテレスは今の世界情勢は「ますます混沌とした世界秩序」と表現する。日本はこの新しい、無秩序な世界に対応していく準備を進めているようだ。